まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち 《10・笑ってくれよ》 

《十・笑ってくれよ》

sideB

 あの日もいつも通り仕事をしてた。繁忙期に入っててただただ忙しくて疲れてたんだ。終わった頃には判断力が少し鈍るくらいに。言い訳だけどさ。あの頃、燃える熱はいつまでも冷めない程感じてた。バカ騒ぎするおまえを横目に復讐の作戦を考えていた。卒業したらすぐに実行できるように。でも作戦を実行するまでに時間をかけすぎたのかな。元気になる妹に毒気を抜かれていったのかもしれない。それで…。完全に言い訳だな。笑うしかないほどの。…それで「終電いっちゃいますね」ってまだ急げば間に合いそうな電車のことを少し俯いて言う同僚にグラついた。自分にもこういう事があるんだーなんて別の人のことみたいに感じて、ちょっとくらい自分のために恋したっていいよなって。こんなの恋でもなんでもないのに。多分おまえとの事は本当じゃないって思っていたかったからなんだ。             

泡沫の幸と永久の過ち 《9・君の笑顔》 

 

《九・君の笑顔》

sideA

 まぁ私は知らないふりしたけどね。きれい好きの君が帰ってきてシャワーを浴びずに寝たのも、腕時計と指輪を外して帰ってきたことも。だって確証はなかったし、君は私の頬にキスをしたから。でも初めてのことで動揺してたの。だから眠れなくて、石鹸のいい香りがする君より早く起きた。いつもは起こされるのに「早起きだね」って笑った君があまりにもいつも通りで、結局私は安心しちゃったんだけどね。あの時何か聞けばよかったのかなー。

                               

泡沫の幸と永久の過ち 《8・始まり》 

《八・始まり》

sideB

 妹が自主退学した理由は子どもを堕ろしたことで学校に行けなくなったからだ。いや、「堕ろす」なんて馬鹿な言葉だ。「人口妊娠中絶」だ。簡単に言うんだ「堕ろす」って。あいつらは。妹はもうとっくに立ちなおってるよ。でも俺は許せないんだ。苦しむ姿を見た。あのまま何もなければもっと楽しい生活があったのは言わなくても分かるだろ。今がどうとかじゃやねぇんだ。それで友達に聞いたり、調べてみたりした。すぐに細かい内容まで分かったよ。馬鹿はベラベラ喋るうえに学校なんて狭い世界だ。お前が弟に「生でやりたいなら違う学校の女にしなよ」って言ったことまで知ってるんだぜ?笑えるよな。そして馬鹿な姉の馬鹿な弟はそうしたんだ。事の後に怒った妹に「出したもんは戻せない。一回だけじゃん。」と。妹は父子家庭で苦労して育ててくれた父に言えなかったそうだ。あいつもばかだなぁ。唯一の救いはお前らの両親が弟を退学後他県に働きに出したことだけかな。一度俺はこっそり様子を見に行ったよ。中卒でまだ体に似合わない重労働を、生意気な文句を言うタイミングもないように働いてた。クソガキはもういいんだ。許せないのはもう一人。弟の事後のセリフを武勇伝の様に笑って仲間に聞かせていた女だった。同じ目には無理だろうがどん底を味わえばいい思った。

                                                    

泡沫の幸と永久の過ち 《7・一夜の密は秘密》 

 

《七・一夜の密は秘密》

sideA

 君に聞きたいんだけどさぁ、浮気されたとして、何年も何回も浮気が続いていたのと一夜限りの勢いだったらどっちが嫌?私はずっと長い間浮気されてる方がショックだって思ってたんだけど、最近はちょっと意見が変わりそー。だって一夜限りの勢いってさ、これまでの誠実さとか信頼を裏切ってしまっても良い…って思っちゃうほどの熱をその相手にもったってことでしょう?めちゃくちゃ熱い夜を過ごしたんでしょう?もしかして長い間一緒にいた私が知らないような顔を見せたんでしょう?

                               

泡沫の幸と永久の過ち 《6・変わらぬ日々だった》 

《六・変わらぬ日々だった》

sideB

 随分うまくやってるつもりだった。俺ってもしかして俳優とか向いてたんじゃないかって思うくらいに。いや、でも役になりきって元に戻るのを忘れちゃうような俳優はちょっと迷惑か。おもえとの出会いは自分でもびっくりするくらいうまくいった。そこからはまぁ必死だったさ。でも意外としてほしいことや言ってほしいことをを感じ取って実行することは難しくないんだなって気づいた。これからマジでモテるかも…なんてもうありえないけど

                                                    

泡沫の幸と永久の過ち 《5・あの日が始まり》 

《五・あの日が始まり》

sideA

 私たちお互いの弟妹の話しをしたことがほとんどなかったよね。最初のごはんでちょっとしたっけ?まぁそんなありきたりな話題を出さないといけないほど退屈な日々じゃなかったからかな。君のおかげでね。本当に毎日楽しかった。朝も昼も夜も。

 あの日の話しをしようか。君が初めて遅くなるのを電話じゃなくてメールでした日。初めてその日の内に帰ってこなかった日。忙しいんだろうなって、でも明日は休日だしゆっくり休んでもらおうって…でも24時を過ぎて少しだけ不安になったの。メールは23時にきたっきり。事故?まさか浮気…?そんなはずないよねって自分の考えに笑った。そしてそんな考えを忘れるために眠ったの。

                               

泡沫の幸と永久の過ち 《4・忘れぬ日々》 

《四・忘れぬ日々》

sideB

 俺と妹は年が2つ離れている。まぁ仲は良いよ。たまに漫画の感想言い合ったり。そのくらい。おとなしいけど友達も結構いたと思う、そんな高校1年のある時急に部屋から出てこなくなった。父は何か知っている様で、妹はそのまま高校を辞めて定時制の高校へ編入した。なんで急に妹の話しをしたか気になる?