まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち 《3・この日を忘れない》 

《三・この日を忘れない》

sideA

 あの歩道橋はいつもの散歩コース。走りたそうなレオンにリードに引かれながらボーっと歩いてたら嫌な音がして、振り返ったらスマホが落ちてた。すぐ拾って「すみません」って手をのばすジョギングのお兄さんに渡そうとしたら、その人なんて言ったと思う?ちょっと驚いた顔で「友達にすごく似てる。ここら辺に住んでるんですか?」って。まぁ君がそのジョギングのお兄さんだから知ってるか。私笑ちゃった。変なナンパかと思ってさ。でもちょっと話してみたら同い年だし出身は近くだし、話がはずんじゃったのよね。もしかしてどっかで会ってるかもしれないですねなんて。でも私は出会ってなくて良かったって思ったの。だって私は悪ぶってるお子ちゃまだったから。何が楽しかったんだか分からないけど強く見せていたかったのよね。いらないことばっかりしてたから、君はきっと賢そうだし私のことなんて嫌いになったはずだもん。

そういえば君は私のどこが好きで付き合ってくれたんだろう。

                                                   

泡沫の幸と永久の過ち 《2・それは今を 2分の2》 

《二・それは今を 2分の2》

sideB

 俺はおまえのことなんか大嫌いだったよ。もともとどうしたって相容れないタイプだって思うだろ。俺は陰キャってほどじゃないけど目立つタイプじゃなかったし、おまえは目立つうるさいギャルだった。頭の悪そうなヤツだって思ってたんだ。怒るか?でもそうだろ。下らないことばっかやっては怒られてた。…なんのことかって思うだろうなぁ。俺たちが初めて会ったのはあの歩道橋じゃないよ。高校の入学式。同じ高校だったんだから。

 

                                                    

泡沫の幸と永久の過ち 《2・それは今を 2分の1》 

《二・それは今を 2分の1》

sideB

 ―「サイアクな日々」だったよ。本当に。もう俺は何が何だか分からなかった。女に振り回される血が俺にも流れてるんだろうな。いや、俺が優柔不断なだけか。俺は途中で熱が収まっていくのを必死で知らないふりして薪をくべてた。その熱は過去の自分を守る方にうつったのかもな。俺は何を演じているのか分からなくなってたんだ。ごめんな。―

 

                                                    

泡沫の幸と永久の過ち 《1・それは過去へ 2分の2》 

《一・それは過去へ 2分の2》

sideA

「君って本当に私のことが大好きだったでしょ?じゃなきゃあんなに毎日頑張れないよ。うん。やっぱりそう。普通の日なのにケーキのプレゼント、星を見に、チョット良いお酒。人込みは苦手なくせに休みの日には私の行きたいところへ連れてってくれた。君は特別な日にするのが上手だったね。私が喜ぶのを見て私より嬉しそうに笑うところが大好きだった。時々仕事で遅くなるときもちゃーんと電話くれたよね。あの日はメールだったけど。帰ってきたら頬にキスしたでしょう。知らないふりしてたのはこれからもずっとそうだって信じてたから。まめな男。私にだけじゃなかったみたいだけど。

初めて会った日を覚えてる?覚えてるよね。だって君だもん。結構「運命」って感じしたんだけどなぁ。あれはちょうどいつもの歩道橋をおりたところだった。

 

                                                    

泡沫の幸と永久の過ち 《1・それは過去へ 2分の1》 

《一・それは過去へ 2分の1》

 

sideA

―「平凡な日々」と言うには君はあまりにまぶしくてサプライザーだったよね。きっともう君以上に私を理解し、君以上に私を愛することができる人はいないんだと思う。そして私もまた、君のことと同じくらいに理解し、君のこと程他の人を愛することはできないんだと思う。だって他の人は君じゃないし、君以上の人はいないから。私は騒がしいタイプだったし君は割と真面目なタイプで真逆の人間なのに、なんでだったんだろうね。―

 

                                                    

私はだれでしょう 5/5

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ヒント5

 

これが最後のヒントよ。

 

私は未来を知らないわ。

でも私は未来であなたと出会う。

私のいる美しいここを、きっと貴方も気に入るわ。

 

 

 

 

私は死。