まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち

泡沫の幸と永久の過ち 《16・それだけのこと》 完結

《十六・それだけのこと》 sideB 自分がこんなドジだとは思わなかったよ。ほとほと自分に嫌気がさす。まさか歩道橋から落ちるとはなぁ。笑うしかないだろもう。俺は嬉しそうに下で待つ顔を見て、心だけじゃなく足元まで揺れてしまった。すべて終わったんだな…

泡沫の幸と永久の過ち 《15・夢のよう》 

《十五・夢のよう》 sideA 君って黒とか紺色とかより爽やかな明るい色が似あうって思ってたけど白は似合わないんだね。初めて知ったよ。今日は最期になったのに初めてばっかりだわ。彼女も駆けつけたのよ?何故かね。あなたとは一夜だけだったとわざわざ言い…

泡沫の幸と永久の過ち 《14・加速した日々》 

《十四・加速した日々》 sideB 驚くと思う。俺はあの日帰ってきて罪悪感からなのかな。おまえの頬にキスをして気づいた。好きだと。嘘だ。分からないんだ。好きになるわけないのに。どれを演じていたんだ。最初は。今は。どれを。誰を。…もう分からなかった…

泡沫の幸と永久の過ち 《13・あまりに急なことだった》 

《十三・あまりに急なことだった》 sideA 本当にどうしてこうなったんだか教えてよ。私たち何かした?…神様って本当にひどいのね。君もたった一度の過ちであんまりだって思うでしょう?でもそうね、私に何か不満があったからあの日帰らない選択をとったんだ…

泡沫の幸と永久の過ち 《12・それだけの事》 

《十二・それだけの事》 sideB 「俺彼女いるけど…」「良いですよ。」たった二言だけ。少し歩いてホテルに着いた。だんだん思考が冴えてきて、彼女のシャワーの音の中、自分に自分で言い訳をしていた。ぐるぐる回る頭とはよそに、ガキっぽいと思ったがあいつ…

泡沫の幸と永久の過ち 《11・どんな理由》 

《十一・どんな理由》 sideA あれから君がちょっとだけ変わった…気がした。例えば、帰宅が少し遅い。とか、「考え事してた」が少し増えた。とか。でも確たる証拠は無く、なにより週末は今までより甘く、優しく、私のために過ごしてくれていた。すべて繁忙期…

泡沫の幸と永久の過ち 《10・笑ってくれよ》 

《十・笑ってくれよ》 sideB あの日もいつも通り仕事をしてた。繁忙期に入っててただただ忙しくて疲れてたんだ。終わった頃には判断力が少し鈍るくらいに。言い訳だけどさ。あの頃、燃える熱はいつまでも冷めない程感じてた。バカ騒ぎするおまえを横目に復讐…

泡沫の幸と永久の過ち 《9・君の笑顔》 

《九・君の笑顔》 sideA まぁ私は知らないふりしたけどね。きれい好きの君が帰ってきてシャワーを浴びずに寝たのも、腕時計と指輪を外して帰ってきたことも。だって確証はなかったし、君は私の頬にキスをしたから。でも初めてのことで動揺してたの。だから眠…

泡沫の幸と永久の過ち 《8・始まり》 

《八・始まり》 sideB 妹が自主退学した理由は子どもを堕ろしたことで学校に行けなくなったからだ。いや、「堕ろす」なんて馬鹿な言葉だ。「人口妊娠中絶」だ。簡単に言うんだ「堕ろす」って。あいつらは。妹はもうとっくに立ちなおってるよ。でも俺は許せな…

泡沫の幸と永久の過ち 《7・一夜の密は秘密》 

《七・一夜の密は秘密》 sideA 君に聞きたいんだけどさぁ、浮気されたとして、何年も何回も浮気が続いていたのと一夜限りの勢いだったらどっちが嫌?私はずっと長い間浮気されてる方がショックだって思ってたんだけど、最近はちょっと意見が変わりそー。だっ…

泡沫の幸と永久の過ち 《6・変わらぬ日々だった》 

《六・変わらぬ日々だった》 sideB 随分うまくやってるつもりだった。俺ってもしかして俳優とか向いてたんじゃないかって思うくらいに。いや、でも役になりきって元に戻るのを忘れちゃうような俳優はちょっと迷惑か。おもえとの出会いは自分でもびっくりする…

泡沫の幸と永久の過ち 《5・あの日が始まり》 

《五・あの日が始まり》 sideA 私たちお互いの弟妹の話しをしたことがほとんどなかったよね。最初のごはんでちょっとしたっけ?まぁそんなありきたりな話題を出さないといけないほど退屈な日々じゃなかったからかな。君のおかげでね。本当に毎日楽しかった。…

泡沫の幸と永久の過ち 《4・忘れぬ日々》 

《四・忘れぬ日々》 sideB 俺と妹は年が2つ離れている。まぁ仲は良いよ。たまに漫画の感想言い合ったり。そのくらい。おとなしいけど友達も結構いたと思う、そんな高校1年のある時急に部屋から出てこなくなった。父は何か知っている様で、妹はそのまま高校…

泡沫の幸と永久の過ち 《3・この日を忘れない》 

《三・この日を忘れない》 sideA あの歩道橋はいつもの散歩コース。走りたそうなレオンにリードに引かれながらボーっと歩いてたら嫌な音がして、振り返ったらスマホが落ちてた。すぐ拾って「すみません」って手をのばすジョギングのお兄さんに渡そうとしたら…

泡沫の幸と永久の過ち 《2・それは今を 2分の2》 

《二・それは今を 2分の2》 sideB 俺はおまえのことなんか大嫌いだったよ。もともとどうしたって相容れないタイプだって思うだろ。俺は陰キャってほどじゃないけど目立つタイプじゃなかったし、おまえは目立つうるさいギャルだった。頭の悪そうなヤツだって…

泡沫の幸と永久の過ち 《2・それは今を 2分の1》 

《二・それは今を 2分の1》 sideB ―「サイアクな日々」だったよ。本当に。もう俺は何が何だか分からなかった。女に振り回される血が俺にも流れてるんだろうな。いや、俺が優柔不断なだけか。俺は途中で熱が収まっていくのを必死で知らないふりして薪をくべ…

泡沫の幸と永久の過ち 《1・それは過去へ 2分の2》 

《一・それは過去へ 2分の2》 sideA 「君って本当に私のことが大好きだったでしょ?じゃなきゃあんなに毎日頑張れないよ。うん。やっぱりそう。普通の日なのにケーキのプレゼント、星を見に、チョット良いお酒。人込みは苦手なくせに休みの日には私の行きた…

泡沫の幸と永久の過ち 《1・それは過去へ 2分の1》 

《一・それは過去へ 2分の1》 sideA ―「平凡な日々」と言うには君はあまりにまぶしくてサプライザーだったよね。きっともう君以上に私を理解し、君以上に私を愛することができる人はいないんだと思う。そして私もまた、君のことと同じくらいに理解し、君の…