まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち 《3・この日を忘れない》 

《三・この日を忘れない》

sideA

 あの歩道橋はいつもの散歩コース。走りたそうなレオンにリードに引かれながらボーっと歩いてたら嫌な音がして、振り返ったらスマホが落ちてた。すぐ拾って「すみません」って手をのばすジョギングのお兄さんに渡そうとしたら、その人なんて言ったと思う?ちょっと驚いた顔で「友達にすごく似てる。ここら辺に住んでるんですか?」って。まぁ君がそのジョギングのお兄さんだから知ってるか。私笑ちゃった。変なナンパかと思ってさ。でもちょっと話してみたら同い年だし出身は近くだし、話がはずんじゃったのよね。もしかしてどっかで会ってるかもしれないですねなんて。でも私は出会ってなくて良かったって思ったの。だって私は悪ぶってるお子ちゃまだったから。何が楽しかったんだか分からないけど強く見せていたかったのよね。いらないことばっかりしてたから、君はきっと賢そうだし私のことなんて嫌いになったはずだもん。

そういえば君は私のどこが好きで付き合ってくれたんだろう。