まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち 《9・君の笑顔》 

 

《九・君の笑顔》

sideA

 まぁ私は知らないふりしたけどね。きれい好きの君が帰ってきてシャワーを浴びずに寝たのも、腕時計と指輪を外して帰ってきたことも。だって確証はなかったし、君は私の頬にキスをしたから。でも初めてのことで動揺してたの。だから眠れなくて、石鹸のいい香りがする君より早く起きた。いつもは起こされるのに「早起きだね」って笑った君があまりにもいつも通りで、結局私は安心しちゃったんだけどね。あの時何か聞けばよかったのかなー。