まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち 《10・笑ってくれよ》 

《十・笑ってくれよ》

sideB

 あの日もいつも通り仕事をしてた。繁忙期に入っててただただ忙しくて疲れてたんだ。終わった頃には判断力が少し鈍るくらいに。言い訳だけどさ。あの頃、燃える熱はいつまでも冷めない程感じてた。バカ騒ぎするおまえを横目に復讐の作戦を考えていた。卒業したらすぐに実行できるように。でも作戦を実行するまでに時間をかけすぎたのかな。元気になる妹に毒気を抜かれていったのかもしれない。それで…。完全に言い訳だな。笑うしかないほどの。…それで「終電いっちゃいますね」ってまだ急げば間に合いそうな電車のことを少し俯いて言う同僚にグラついた。自分にもこういう事があるんだーなんて別の人のことみたいに感じて、ちょっとくらい自分のために恋したっていいよなって。こんなの恋でもなんでもないのに。多分おまえとの事は本当じゃないって思っていたかったからなんだ。