まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち 《8・始まり》 

《八・始まり》

sideB

 妹が自主退学した理由は子どもを堕ろしたことで学校に行けなくなったからだ。いや、「堕ろす」なんて馬鹿な言葉だ。「人口妊娠中絶」だ。簡単に言うんだ「堕ろす」って。あいつらは。妹はもうとっくに立ちなおってるよ。でも俺は許せないんだ。苦しむ姿を見た。あのまま何もなければもっと楽しい生活があったのは言わなくても分かるだろ。今がどうとかじゃやねぇんだ。それで友達に聞いたり、調べてみたりした。すぐに細かい内容まで分かったよ。馬鹿はベラベラ喋るうえに学校なんて狭い世界だ。お前が弟に「生でやりたいなら違う学校の女にしなよ」って言ったことまで知ってるんだぜ?笑えるよな。そして馬鹿な姉の馬鹿な弟はそうしたんだ。事の後に怒った妹に「出したもんは戻せない。一回だけじゃん。」と。妹は父子家庭で苦労して育ててくれた父に言えなかったそうだ。あいつもばかだなぁ。唯一の救いはお前らの両親が弟を退学後他県に働きに出したことだけかな。一度俺はこっそり様子を見に行ったよ。中卒でまだ体に似合わない重労働を、生意気な文句を言うタイミングもないように働いてた。クソガキはもういいんだ。許せないのはもう一人。弟の事後のセリフを武勇伝の様に笑って仲間に聞かせていた女だった。同じ目には無理だろうがどん底を味わえばいい思った。