まばたきの隙に

数行に、そのままに、

泡沫の幸と永久の過ち 《16・それだけのこと》 完結

《十六・それだけのこと》

sideB

 

自分がこんなドジだとは思わなかったよ。ほとほと自分に嫌気がさす。まさか歩道橋から落ちるとはなぁ。笑うしかないだろもう。俺は嬉しそうに下で待つ顔を見て、心だけじゃなく足元まで揺れてしまった。すべて終わったんだなぁ。皆馬鹿だと思うだろうな。こんなあっけない…。俺もそう思うさ。でも神様の優しさなのか全然後悔はしてないんだ。あいつが泣いているのが見えた。きっと俺にひどくフラれるよりずっと辛い結末になっただろう。愛する人を失いまさしくどん底だろう。そしてきっと一生俺を忘れない。これは、それでいいんだ。

明るさに憧れたことなんかただの一度だってなかったさ。

 

                                  春海 晶穂